
元買取店店長のサトーです。
亡くなったお父さん、お爺さんの名義の車など、意外にこういう相続車両の買取査定や廃車は多くあります。何も、弁護士さんなどに依頼せずとも大丈夫です。買取会社などに売却する時や、廃車、または自分で親族の誰かの名義にする場合の手続き、必要書類などを書きます。
また、亡くなられた方の車であろうが、買取業者はとにかく安く買おうとしてきます。ちょっとひどい話ではありますが、車の買取や下取りの業界自体がそういう体質であるのが実情です。安く買い叩かれないように、プロとして、高く売る方法もお教えします。
※ 先にチェックしてほしいこと!
先にお伝えしておきたい事がもう一つ、亡くなられた方名義の車をそのまま運転する方も多いと思います。その前に、自動車保険(任意保険)の会社に連絡は入れていますか?もし事故を起こしてしまった場合、保険適用がされなくなる場合もありますので、もし乗車されるのであれば、先に自動車保険の会社に報告をして下さい。
ちなみに自賠責保険は人ではなく車自体が加入している保険なので、誰が所有していても何の手続きも必要ないです。車検がある車には法的に強制加入されていますので、なにも気にしなくて大丈夫です。次の車検時まで名義も変えなくて大丈夫です。
亡くなった方の車を売却する時の必要書類
用意しなければならない書類を説明します。
車は、財産とみなされるため、車検証の所有者が亡くなられた場合、車は遺産として扱われ、相続車両、という呼び方をしたりします。
その為、車の売却時には通常の名義変更時に用意する書類とは別に、以下の証明をする書類が必要になります。通常の名義変更に関しては、こちらの記事をご覧ください。
【プロが完全解説】名義変更(普通車&軽自動車)の必要書類、書き方、流れ、委任状や譲渡証明書のダウンロード
以下の3点が必要になります。
所有者が死亡したとわかる書類 ①
相続人との関係性がわかる書類 ②
相続人の実印、署名がなされた遺産分割協議書 ③
3つの詳細を、順を追って説明します。
所有者が死亡したとわかる書類 ①
亡くなられた方の、戸籍謄本(コセキトウホン)を市役所などで取得してください。これで、亡くなられた事の証明ができます。
相続人との関係性がわかる書類 ②
これも亡くなられた方の、戸籍謄本(コセキトウホン)に記載されています。
1通取得すれば大丈夫です。
ただ、戸籍謄本だけでは関係性が証明できないケースがあり、別途書類が必要なケースもありますので説明していきます。
ここで、「相続人とは」 をはっきりさせます。
わかりやすくする為に、5人家族と仮定します。
・ 父親(亡くなられた車の所有者)
・ 父、妻、兄、長女、弟 の5人家族とします。
相続人は、父親以外の4人の事を指します。
父親の兄弟や、妻の兄弟、いわゆる親戚は、相続人としては考えません。
あくまでも、1世帯の最小単位に限って、相続人と考えます。
厳密には、1段階~3段階の順位で相続人が存在しますが、自動車の取引ではこのケースでやり取りする事がほとんどなので、細かい事は無視して読んで下さい。
妻と子供 = 相続人です。
孫も、おじいちゃん、おばあちゃんも、相続人として考えません。財産ですので、例えばおじいちゃんにもお金の一部を渡す、などの事情はあるかもしれませんが、車を売却する際は、まずは売却するための手続きを簡単にするために、
妻と子供 = 相続人
と考えて売却をする事になります。
仮に、この家族構成で兄が亡くなられた場合は、
父と妻と子供 = 相続人
と考えます。
そして、車を買取会社などに売却する時には、相続人の中から代表者を一人決めて、その人の名義にしてから、お金を一人の代表の相続人に支払います。もちろん買取会社によってはお金を別の人に振り込む事も可能です。車を売却した後のお金の分配は、親族で話し合ってどう分配するのかになりますので、そこに関しては業者は何も関与しません。車の買取会社やディーラーでも、複数の相続人に分配してお金を振り込むなんてことは聞いたことがありませんので、ほぼ対応はしてくれないでしょう。
また売却はせずに親族の誰かの名義にする際も、同じく相続人の中から代表者を一人決めるという手続きを取ります。その点は引き続き説明していきます。
話を戻しますが、まずはこの相続人(今回は最小単位の家族)と、亡くなった人との関係を証明できるのが、亡くなられた方の戸籍謄本(コセキトウホン)になりますので用意しましょう。
戸籍謄本だけでは相続人との関係性が証明できない場合
良くあるケースで、戸籍謄本を取得すると、長女や次女の記載が書いていない事が良くあります。結婚して、戸籍謄本から除籍されているのです。
(平成 16 年ころから、多くの役所の書類電子化が日本各地で徐々に行われ、それ以前に長女や次女が結婚している場合、お父さんの戸籍謄本を取得しても記載が無い事があります)
その場合は、
・改正原戸籍(カイセイゲンコセキ)
という書類を取得します。
これには、亡くなったお父さんのもっと昔からの電子化される前の履歴が載っているため、ほとんどの場合相続人全員の記載があります。戸籍謄本を見て、除外されている場合の家族がいる場合は、亡くなられた方の本籍地である市役所や役場から取り寄せる必要があります。
まず役所に行ったら、「車の売却に伴い相続人の関係性が書かれている書類が必要です」と伝えて下さい。先に戸籍謄本を取得する事になるでしょう。そこに記載がない家族がいた場合には、改製原戸籍を亡くなられた方の本籍地で取得をして下さい。本籍地が遠方の場合などでも、各市区町村、郵送での受付も可能です。
つぎに、
相続人の実印、署名がなされた遺産分割協議書
を用意しましょう。
相続人の実印、署名がなされた遺産分割協議書 ダウンロード可 ③
そのままこれをダウンロードし、印刷して使用して頂いて大丈夫です。
この書類は、「相続人の中の代表者「1人」に車を相続する」という書類になります。
車の名義は、結局1人の所有者しか車検証に記載できませんので、家族全員が納得して、1人の代表者に遺産を渡す事をきめましたよ、という事を証明する書類です。自動車の場合は誰か一人にしか名義変更ができませんので、業者に売却する時も、家族の誰かの名義に変更する場合も必ず必要になる書類です。
親族間のお金のやり取りに業者は関与しませんが、どうしても車を売却、または名義変更をする際には一人の名義にしなければならないために必要になる書類です。
遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議書の見本を自作してみました。
写メで撮ったものでキレイでは無いですが・・
今回例にあげた家族構成(亡くなられた父、妻、兄、長女、弟)の場合で遺産分割協議書を書きました。
兄(佐藤 A太郎)が自動車を相続すると決めた場合で書きました。
上の画像で書いてある通りなのですが、念のため用紙の上から細かく説明しますね。
・亡くなられた日付を書きます
・亡くなられた方の氏名を書きます
・代表の相続人 兄 の氏名を書きます
・車検証の通りに、自動車登録番号、車体番号を書きます
・日付を書く
※ ここの日付について。自分で名義変更をする場合のここに記載する日付は、戸籍謄本や印鑑証明を取得した日付よりも後の日付で、かつ取得した日から3か月以内の日付を書かないとダメですし、名義変更の手続きも取得後3か月以内でしないとダメです。おすすめは、陸運局で名義変更をする時まで日付は書かないで空白にしておくのが一番よい方法です。陸運局の窓口の方から日付を書くように指示されるので、それに従った日付を書くのが一番安全です。業者に売却する時も空白でOKです。
・相続人の住所、氏名を書く
・相続人それぞれの実印を押印する
ちなみに、遺産分割協議書はこのフォーマットである必要は一切ありません。自作した書類でも上記条件がすべて網羅してあればなんでも大丈夫です。
遺産分割協議書を書く上で特に気をつけるべき点
・直筆で書く事
・印鑑証明書通りの住所、氏名を書く事
・相続人はみんな実印を押印する事
が、定められています。
ただこれが、かなり面倒になります。
実印を持っていない人は、実印を用意して印鑑登録を役所で手続きをする必要があるし、遠方に住んでいる場合は、相続人同士で連携して遺産分割協議書を郵送でやり取りをする必要があります。ここで記載ミスがあればやり直しなワケです。(余白に各人の捨印があれば訂正は可能です)
でも実際は名義変更時に陸運局に提出する印鑑証明書の原本は、車の名義にする予定の兄のみ、が必要になるだけなので、残りの3名の相続人が仮に実印ではなく認印を押したとしても、実際はわからない訳です。。だから実際に実印でなくても業者への売却や、名義変更はできてしまいます。。 ただ!法的には相続人全員が実印を押印する事が定められていますのであしからず!
戸籍謄本や遺産分割協議書がそろったら、最後に新所有者(今回は 兄)の、印鑑証明書を取得すればOKです。先ほど紹介した、【プロが完全解説】名義変更(普通車&軽自動車)の必要書類、書き方、流れ、委任状や譲渡証明書のダウンロード の記事を見て頂ければ、名義変更のやり方や必要書類などもすべて詳細に明記しています。通常の名義変更でも多くの書類が必要になりますが、印鑑証明書以外は、どれもネットでダウンロードできたり、陸運局現地に行って取得するものなので、下記の書類がそろっていれば、亡くなられた方の車を、業者への売却、または自分で名義変更ができます。
相続車両の売却、名義変更の必要書類のまとめ
・戸籍謄本や改製原戸籍などの、所有者が亡くなられた証明&相続人の関係性が証明できる書類
・相続人の実印&署名がされた遺産分割協議書
・相続人代表者の印鑑証明書(もちろん実印も)
・その他、通常の名義変更の書類
が必要になります。
車庫証明が必要になる場合
また、亡くなられた方と同じ保管場所で車を使用する場合は、車庫証明は不要なのですが、別の場所で保管する場合は、新たに車庫証明が必要になります。業者に売却する時は不要です。
こちらの記事に車庫証明の取得方法を明記していますので、良かったら見て下さい。
【徹底解説!】普通車や軽自動車の車庫証明の書き方、取得方法、申請方法、費用、自分でやろう!
亡くなられた所有者の方の車が<軽自動車>の場合
ちなみに軽自動車の場合は、遺産分割協議書は不要になります。
軽自動車で取得が必要なのは、上で書いた、
所有者が死亡したとわかる書類 ①
相続人との関係性がわかる書類 ②
と、
通常の売却時に用意する書類など
になります。
つまり、亡くなられた事が証明されている、亡くなられた方の戸籍謄本と、また、戸籍謄本に相続人全員との関係性が書いていない場合は、改製原戸籍を取得して頂ければ、あとは普通に売却する場合と何も変わりません。
軽自動車の場合は、ただ高く売る事だけを考えていればよいです。通常の売却時にはまず最低でも車検証と、車検が残っていれば自賠責保険証があれば売却ができます。なので、軽自動車の方はこちらの記事を読んで下さい。
売却はせずに、どなたかご親族の名義にする予定の車でしたら、新所有者の住民票、認印が必要になるだけです。ご自身で名義変更をする場合は、先ほど紹介した名義変更の記事を見て頂ければと思います。
100万円以下の車の場合、遺産分割協議書は必要ない
100万円以下の査定額の場合は、遺産分割協議書を省く事ができます。ただその代用として、「査定証」という書類が必要になります。
査定証とは、商品としての価値を証明する書類で、車屋さん、買取専門店、ディーラーなどで発行が可能なのですが、実際にお客さんが依頼しようとしても対応してくれない事がほとんどです。というのも、査定証というのは、買取業者などが、相続車両を買取や下取りをした後に、陸運局で自社名義に変更をする業務目的で作成する事くらいしか使う事がないためです。
なので、町の車屋さん、ディーラーさん、買取専門店さんに、「査定証を発行してもらいたいんですが」と電話をしても、
「? 何のことでしょう? 車を売却されたいのですか? え、違う? 相続車両を名義変更するために必要なのですね? なるほど、すみません、当社ではそのような業務は行っていません。」
ってほぼどの会社でも言われる事ばかりになるので、労力の無駄になります。
これは、100万円以下の価値の車であったとしても、査定書ではなく、遺産分割協議書で対応される方が多いためです。なぜかと言うと、陸運局に電話をして聞いても、先に必ず遺産分割協議書を作ってくれ、とか、ネットで検索しても遺産分割協議書を作成しよう!とか、弁護士さんでも、まず真っ先に伝えるのがこれなんです。相続車両の手続きは複雑なので、まずは王道のやり方を説明するのが先に来てしまいますし、業界がそういう風潮になってる。という他ありません。また、査定証を作成するのにお金もかかるのが一つの要因でもあると思います。
あまりネット上で書く事ではありませんが、遺産分割協議書で印鑑証明書が必要になるのは代表の相続人だけなので、他の相続人の名前や住所は代筆しようと思えばできてしまうし、他の相続人の実印を証明するための印鑑証明書提出の義務もありませんから、認印を100円ショップで買って、ができてしまう現状があります。それが主な原因なのかもしれません。
※ 当然法律で定められていますので、遺産分割協議書の代筆、実印以外での押印は絶対にだめです。
でも、家族の仲が悪かったり、連絡が取れなかったり、色々な事情があって遺産分割協議書はどうしても取得できない。したくない。という方も多くいらっしゃるかと思います。100万円以下の価値で、そういう事情がある方は、査定証をゲットすれば遺産分割協議書は不要です。
車の査定証はどこで発行してもらえば良いか?
100万円以下の場合、買取会社が発行してくれたりもしますので、業者に依頼するのがベストです。ただ依頼する前にしっかり高く売る方法を知ってから依頼した方が良いです。こちらの記事ご紹介しています。
査定証は、JAAI(日本自動車査定協会) ここが運営母体となり、全国の都道府県の事業所で査定、発行をしてもらえます。北海道~沖縄までをカバーしています。
査定士資格を持った査定士に実車査定をしてもらう必要があるので、お店に出向くか、出張査定をしてもらう事を選ぶことができます。出張査定を受ける場合は別途料金が必要になり、離島などの場合は要相談になります。
依頼される場合は、下記のページを見て電話連絡をして相談してください。
所有者が亡くなられた後にずっと放置している不動車を廃車するには?
所有者が亡くなられた後、何年も放置している車の処分にどうしようかと思われている方もいらっしゃると思います。基本自動車という物は鉄でできていますので、鉄としての価値が最低限あります。例えサビてボロボロになっていても、不動車のままコケが生えていたとしても、ちゃんと価値があります。
買取会社には引取料を取ると言われた・・
もう本当に商品価値はないだろう・・
こういう場合でも、最低でも0円で引き取りをしてくれたり、少しでもお金を出してくれる会社もあります。
ハイシャルというサイトが、全国の解体業者の窓口をしており、引取りは無料で、価値がある場合は査定額をつけてくれるし、まだ車検が残っている場合は、自動車税、重量税、自賠責保険料の残金の還付まで代行してくれますのでとても良心的です。
査定依頼をすれば、必要書類なども全部教えてくれますし用意もしてくれるので、先に相続の書類を用意しなくても大丈夫です。
車を本当に高く売るには?
過去に査定を受けて、
「引取料がかかる」、「0円で良ければ引取る」、こんな感じで、あまり買取会社が欲しそうにしていない場合は上で紹介した廃車サイトでお願いするのがベストだと思いますが、
まだ査定を受けていない方
まだ価値があるかも・・という車
その場合はちょっと考えた方が良いです。
日本の中古車というのは世界で人気があるので、めちゃめちゃポンコツだと思っていた車が、100万円?ってことも結構良くあります。私自身中古車業界に入った時本当に驚きました。0円、1万円で買取した車が、海外相場では100万円付く事もあり、買取したらすぐに売れるんです。そういう車は買取会社に言われたまま安く売ってしまう事が多いので、勝手な思い込みは禁物です。
亡くなられた方の車であったとしても、車の買取業界の多くの会社が、安く仕入れる事以外考えていない状況でした。。
正直本当に悲しい話ではありますが、実際そういう業界です。
そこで重要なのは、何の書類や手続きが必要なのか、ではありません。
相続車両についてたくさんの事を書きましたが、自分の名義にするわけではなく、業者に売却される予定であれば、基本的に全部業者がなにもかも教えてくれますし、書類なども用意してくれます。
一番大切な事は、高く売ること! それだけを考えて下さい。
どこも安く買おうとしていますが、
業者のぎりぎり限界の金額を提示してもらう事
それが重要だという事です。
じゃあどうすればよいのか?
次ページで説明していきます。